時代は「分断」から「統合」へ。。。新型コロナに関する情報発信を続ける山中伸弥さんのインタビュー記事から感じたこと。

新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるべく、iPS細胞でノーベル賞を受賞した研究者・山中伸弥先生がネットで情報発信を行っていますね。

で、地元の京都新聞がインタビュー記事をアップしているのですが、この内容が結構興味深いです。まず取材の趣旨はこんな感じ(太字は筆者)。

 新型コロナウイルスの感染拡大を抑えようと、京都大の山中伸弥教授がインターネットで情報発信を続けている。海外発の科学論文や報道に関するまとめ、自らの提言を次々に自身のホームページにアップ。所長を務めるiPS細胞研究所とは関係なく、あくまで個人の発信という位置付けだ。感染症や公衆衛生の専門家ではないにもかかわらず積極的に行動している理由は何か。京都新聞社の取材に山中氏が社会に伝えたい思いを語った。政府の緊急事態宣言から14日で1週間。

確かに専門家ではないですよね。一般の人からしたらはるかに基礎知識はあると思いますが。。以下、インタビューを抜粋します。

ーー約1カ月前から、ホームページで積極的に情報発信をしている。どのような思いで始めたのか。

「日本では2月末というかなり早い時期から、政府による休校要請などの対策を打ち出した。しかし3月中旬になると街に人があふれるようになった。身近な知人も大規模な集会をしようとした。これは大変なことになると思い、情報発信を始めた」

ーー自身は2月末の時点でどのように事態を捉えていたのか。

「1、2週間がヤマ場というのはものすごく誤解されると思った。緊急事態宣言も1カ月頑張ろうというニュアンスで発信されていると思うが、心配している。1カ月だけの辛抱だと多くの人が思っている気がする。僕は専門家ではないが、かなりの確率で1カ月では元通りにならないと確信を持って言える。継続して我慢していかないと駄目だ。中国や米国の状況を見ていてもそう思う」

ーー感染者数の拡大が収まるにはどのようなケースがあり得るか。

「三つしかない。一つは季節性インフルエンザのように気温などの理由でコロナウイルスが勢いをなくすこと。だが気温にかかわらず世界中でまん延していることからすれば、そうでない可能性は高い。そうなると後は二つ。ほとんどの人が感染して集団免疫という状態になるか、ワクチンや治療薬ができることだ。ワクチンや治療薬は1年ではできないのではないか。最低1年は覚悟しないといけない。ダッシュと思って全力疾走すると、まだ(ウイルスが社会に)残っているのに力尽きることになってしまう」

ーー覚悟を決めるには専門家からの情報が重要だが、さまざまな意見もある。例えばPCR検査についてはもっとやるべきという意見があった一方、十分な数を行っているという専門家もいた。

「医療現場の関係者へのPCRが不十分だと言う人は多い。さまざまな病院で院内感染が起こるようになり、フェイズ(段階)が変わった。医療現場では徹底的にPCRで調べ、誰が働き続けられてどの病棟を閉めるべきか判断しないといけない。そのためには医療機関のクラスターをきちっと調べることが必要だが、それができていない。確かに以前はいろいろな意見があったが、だいぶ一致してきているのではないか」

ーーとはいえ一般の人々からすれば、専門家が議論する過程をリアルタイムで追うのは難しい。

「なるほど。それはそうだ」

ーー専門外の人間がどのように情報を取って、どうやって1年間を頑張ればよいのだろうか。

「僕の方が聞きたい面もある。情報発信でも試行錯誤を続けている。正解を知っている訳ではまったくない。僕も含めてどんなペースで走ったらいいのか分かっていない。しかし最初が大事。いいペースを見つけて走りだすとうまくいく」

長期化することを予測しつつ、その期限を「最低1年」とした理由を、やっぱりワクチンや治療薬に求めるのかあ。。。と正直思いました。

ワクチンが十分に効かなかったら? もちろん、全員に効くわけではないですし、ウイルスが変異する可能性もある。

いろいろと不測の事態が生まれることも考えると、科学の最先端にいる人の認識でも、「結局、どうなるかよくわからない」ということなんでしょうね。

そのあたりの心境が読み取れるのがまず興味深いですが、同時にもっと発信することがあるのではとも感じました。

僕は反ワクチンとかを謳っているわけではないし、仕事柄、科学には最大限のリスペクトを持っていますが。。。でも、同時にこう思う。

世の中、「その分野の専門家」ばかり。専門性は大事だけれど、その人の発想が特別優れているとは限らない。

もし本質を見る目」がなかったら? 視点がズレていたら?

山中先生が間違ったことを発信していると言っているわけではありません。

そうではなく、たとえば今回の新型コロナウイルスについても、感染症の専門家というだけではたぶん「統合する視点」は得られません。

公衆衛生に詳しくても、ウイルスを防御するには、栄養学、ストレスケアなど体の内部に対する知恵、セルフメンテナンス的な視点も不可欠です。

でも、研究者もお医者さんも、食事でウイルスが防げるなんてはなから思ってはいない。。ですよね? 実際、「食事(あるいはサプリメント)でウイルスが防げる」わけではないですが、それを言ったら「マスクや手洗いでウイルスが防げる」とも言えない。

でも、何もやらずに無自覚に生活するよりも発症リスクが防げるという認識があるから、国を挙げてすすめているわけですよね。

逆に言うと、栄養学者は感染症や免疫の専門家ではないから、あまり思い切った発言ができないところもあるのかもしれない。でも、集団免疫的なもので乗り切ろうとするには、栄養学的な視点は不可欠ですよ。

自分自身の体に備わった防御力をいろいろな形で強化していかなければ、丸裸の状態でウイルスに立ち向かうようなものじゃないですか。笑

誤解されないように言っておくと、僕はただ「食事やストレスケア の大切さ」を説いているわけではありません。

それはほんの一例であって、もっと俯瞰してこの社会を見渡せば、健康、医療、食、栄養、能力開発、自己啓発、すべてバラバラで、すべてに専門家がいる感じですよね。

すべておなじ「身体」を媒介にしているにもかかわらず。。。

たとえば、マインドフルネスをやっている人は、「心」については深く扱っていますが、食や栄養のことはあまり詳しくなく、逆に食事療法をすすめている人は食べ物とメンタルの関わりにまではあまり言及しない。

どうしたら統合できるか? それは「現象の全体を感覚的につかむ」ということ。

種々の「専門家」から見たら危ういところももちろんありますが、かの有名なエルヴィン・シュレディンガーも次のように語っています。いろいろなところで引用していますが、ここで改めて再掲すると。。。

しかし、過ぐる百年余の間に、学問の多種多様の分枝は、その広さにおいても、またその深さにおいてもますます拡がり、われわれは奇妙な矛盾に直面するに至りました。 

われわれは、今までに知られてきたことの総和を結び合わせて一つの全一的なものにするに足りる信頼できる素材が、今ようやく獲得されはじめたばかりであることを、はっきりと感じます。

ところが一方では、ただ一人の人間の頭脳が、学問全体の中の一つの小さな専門領域以上のものを十分に支配することは、ほとんど不可能に近くなってしまったのです。

そう。この数百年ですべてを一人ではまかないきれないくらいに、学問の領域は拡がりました。科学が世界を説き明かすためのものである以上、無限の拡がりを見せたとしても、それ自体、驚くほどのことではないでしょう。

でも、無限の拡がりは、別の見方をすれば学問の細分化につながります。専門家は増えたけれども、全体を包括する知識の実体は見えなくなってしまった。シュレディンガーはそれを危惧し、警告しています。

この矛盾を切り抜けるには(われわれの真の目的が永久に失われてしまわないようにするためには)、われわれの中の誰かが、諸々の事実や理論を総合する仕事に思い切って手をつけるより他には道がないと思います。

たとえその事実や理論の若干については、又聞きで不完全にしか知らなくとも、また物笑いの種になる危険を冒しても、そうするより他には道がないと思うのです。 

(以上、エルヴィン・シュレーディンガー「生命とは何か 物理的にみた生細胞」岩波新書)

シュレディンガーの「生命とは何か」が日本で刊行されたのは、1951年。そこから数えてももう70年ですよ。そろそろ新しいフェーズに、集合知をより統合した形で育んでいくステップが求められているのではないでしょうか?

僕自身の「俯瞰した目」は、今回の新型コロナウイルスのパンデミックをそのようにとらえ、別の意味で希望を感じたりしています。

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